運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
***


 結界塔での出来事から、すでに一週間が過ぎていた。その間にセレナは、力の弱まっていた三つのオーブも新たに精製し、アルナリア全土に再び安定した結界が張りめぐらされた。

 北の山脈のゴーレムは沈黙し、海辺の町ではセイレーンの歌声に惑わされる船乗りもいない。王都は久方ぶりに、穏やかな日常を取り戻していた。

 昼下がり、セレナはリディアに誘われて、王立図書館を訪れていた。

 高窓から差し込む柔らかな陽の光の中、本の匂いに囲まれて、歴史の資料を読みあさる。考古学を学んでいたころが懐かしく思えるような穏やかな空間に、突如、リディアの声が響き渡る。

「セレナさんっ、ご覧になって。こちらにおもしろい本がありますわよ」
「何かわかったの?」

 セレナは本から目をあげて尋ねた。

 実は、ふたりはあることについて調べていた。それは、好奇心をぶら下げるリディアのあるひとことがきっかけだった。

『イザベラには唯一、信用できる"あの人"がいましたのよね? それが誰だか、調べてみませんこと?』

 もちろん、それについて、セレナも気になっていた。すぐにリディアと意気投合し、さまざまな本を黙々と読み進めていた。いまだそれらしい記述が見つけられない中、リディアは何やら発見したらしい。

「ええ、とても興味深いものが」

 リディアは金色の表紙の分厚い本を大事そうに抱えながら、どこか誇らしげにうなずく。
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