運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい



 重厚な門をくぐると、視界に飛び込んできたのは白亜の館だった。夕暮れの光を受けて金色に輝く壁面は、遠目に見た以上に気品に満ちている。

 広い石畳の中庭に馬が整然と並び、階段の上にはすでに出迎えの人々が控えていた。

「お久しぶりでございます、アレクシス王太子殿下。遠路はるばるようこそお越しくださいました」

 うやうやしく頭を下げたのは、落ち着いた風貌の中年の男──この街を治めるメルン伯爵だ。

「メルン卿も元気そうで何より。急な訪問で手数をかけたな」

 儀礼的にあいさつを交わすアレクの奥で、伯爵家の使用人たちが、こっそりとこちらの様子をうかがっているのが見て取れる。黒いドレス姿の自分が場違いに思えて、セレナはアレクの後ろへ隠れてしまいたい衝動にかられながら、前へ進み出てきた令嬢へと目を移す。

「セレナ、こちらがメルン卿の令嬢、リディアだ。おまえの世話を心よく引き受けてくれた。くれぐれも失礼のないようにな」
「あ……、はいっ」

 リディアという伯爵令嬢は、美しい青色の髪に、それよりも淡い青の瞳を持つ娘だった。アレクにじろりとにらまれて、セレナはあわてて進み出ると、両手を前で重ねて頭を下げた。

「セレナ……と申します。今晩、お世話になります。よろしくお願いします」

 どう名乗るか悩んで、そうあいさつした。この世界では、ミドウの名は通じないだろう。それだけでなく、御堂星麗奈はもう……。
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