運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 それにしても、おいしそうなお菓子が目の前にずらりと並んでいる。クラリスが「どうぞ」と勧めてくれるから、クッキーに手を伸ばすと、レオンが口を開く。

「兄さんも心配だよね?」
「何の話だ」
「鏡の中のイザベラが悪さするんじゃないかって話だよ」

 唐突にレオンがその話を持ち出す。いや、彼としては、お茶会を開いた目的の一つだったのかもしれないが。

「セレナは婚約者じゃない」

 にこにこ顔で話すレオンを、アレクがたしなめる。

「いずれ、そうなるんだろう? そうじゃなきゃ、兄さんがセレナさんを引き留めてる理由がわからない」
「彼女はアルナリアに貢献してもらっているのだから当然だ。陛下も認めている」
「聞いたよ、結界塔の話は。兵士たちもざわついてるね。闇魔法を扱える者が現れるのは、オリオン魔術師団長以来だからね」

 感心するような目を向けられて、セレナが何と答えていいのか迷っていると、クラリスが両手のひらをそっと合わせる。

「そうでした。セレナは魔法が扱えるのですよね。各地で魔物が増えていると聞きますから、アレク様、討伐にセレナを連れていかないでくださいね」

 なかなか鋭い。クラリスが釘をさすと、アレクはわずかに唇を歪める。

 イザベラ討伐のために闇魔法の使い手が必要だと言い切った彼が、それを撤回する気はないだろう。
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