運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 途端に、華やかだったお茶会の場が、しんと冷たく静まりかえる。まるで、クラリスたちがひだまりまで連れ帰ってしまったみたいに。

 セレナは空になったティーカップを両手で包みながら、ちらちらとアレクの様子をうかがった。

 彼は足を組んだまま、何を考えているのかわからない横顔を見せている。

 ……気まずい。

 萎縮するように肩をすくめると、アレクがこちらに目を向けた。思わず、わざとらしく視線をそらしてしまう。

 そのとき、ひときわ強い風が吹き、薔薇の香りが二人の間に流れ込んでくる。

 いい香りですね。王城の薔薇はやっぱり他とは違います。

 そんな会話をするべきか、とっさに頭に浮かんだが、結局、何も言葉が出ず、ますます沈黙が際立っただけだった。

「……何をそんなに身構えてる。俺とふたりきりになるのが、そんなにいやか?」

 あきれ顔で、アレクはほんの少し腰を浮かす。

 もしかして、帰る気だろうか。それは困る。

「い、いやじゃないですっ」

 セレナは反射的に答えていた。

 むしろ、この機会を逃すわけにはいかなかった。でも、舌の痣を見せてほしい……だなんて、とても言える気がしない。

「いやじゃ……ないのか」

 なんとも拍子抜けした顔で、アレクはごほんとわざとらしく咳払いをし、座り直す。

「えっと、お茶会になれないだけで、殿下がどうのというわけではなくて……」
「そのわりには、ずいぶん固いじゃないか。そんなに俺が怖いか?」

 目尻をさげ、からかうような声音で話す姿に胸がどきりとした。いつも不機嫌そうにしているから、気安く笑いかけられると、また違う居心地悪さを感じてしまう。

 もじもじしていると、彼はふと目を細める。

「……たまにはな、腹を割って話してみてもいいかと思ったんだ」
「腹を割って……ですか?」
< 115 / 177 >

この作品をシェア

pagetop