運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「もちろん、ございます。地理にご興味でもおありですの? 話が合いそうですわ。すぐにお持ちしますね」

 話が合いそう? 彼女は地理に詳しいのだろうか。

「あ、ありがとうございます」

 戸惑いながら礼を言うと、リディアは早速メイドに地図を運んでくるように指示をした。

 すぐに部屋を出ていくメイドと入れ違うようにして、衝立(ついた)てと大きな湯桶が運ばれてくる。その中へ、次から次へと湯気の立つお湯が流し込まれていく。お風呂の支度を整えている間も、リディアは黙っていられないようで、口をはさむ。

「熱すぎると血の巡りがよくなりすぎて眠れなくなると言いますから、少しぬるめにお願いしますね。……ええ、そこのあなた。せっけんはバラの香りのものを。ドレスは……そう。ええ、……それでいいわ」

 リディアは満足するようにうなずくと、湯桶へと手を向ける。

「準備ができましたわ。セレナさん、どうぞごゆっくり。私はここで待たせていただきますわね」

 リディアはお風呂からあがるのを待つようだ。アレクから監視するように言われているのだろう。ひとりにしてほしいとは言い出せず、セレナはおとなしく受け入れることにした。何より、体中が泥臭く、汗もかいて気になっていたのだ。

 衝立てに隠れるようにしてドレスを脱いで、お湯に浸かると、ホッと息が出た。あまりの心地よさに目を閉じていると、「失礼します」と声が聞こえて、メイドがそばへやってくる。

 彼女たちはさもあたりまえのように、セレナの体と髪をバラの香りがするせっけんで丁寧に洗った。拒む余裕などなかった。
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