運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「セレナ様、アレクシス殿下がお越しです」

 エマの声だった。深く息を吸い、セレナは立ち上がる。

 エマには羊皮紙の内容は黙っているように伝えた。彼女が命令を破ることはない。こんな朝早くにアレクがわざわざ来るなんておかしい。重大な何かが起きたのだろうか。

「おはようございます。……お出かけですか?」

 開いた扉の奥に立つアレクは、いつもの豪華なコート姿と違って、戦装束に身を包んでいた。胸当ての上にマントを羽織り、腰には立派な装飾のついた剣を差している。

「そうも、不安にする必要はない」

 こわばった表情をほぐそうとしたのか、アレクはするりとほおをなでてくる。

「べナール地方で、魔物の目撃情報があった。調査に出かけるだけだ。しばらく王都は留守にするが、おまえは普段通り過ごすがいい」
「魔物って、どんな? 結界は完璧なはず……」

 セレナの結界が失敗したわけではない。暗にそう伝える、労わりの目をアレクはする。

「それが、いまだ誰も見たことがない魔獣のようだ」
「見たことがないって……、危険じゃないですか? 私も一緒に行きます」

 即座に申し出るが、アレクのまなざしが鋭くなっただけだった。

「得体の知れないものに、セレナを近づけるわけにはいかない」
「私に危険があるかもって心配してるんですか?」
「あたりまえだろう。何よりもおまえが大事に決まっている」

 セレナは一瞬ひるんだ。こんなにもあからさまに好意を伝えてくれると思ってなかった。

「……でも、闇魔法の力が必要だって言ったのはアレクじゃない」
「必要なのは、今じゃない」

 ぴしゃりと言われた。

 だったら、いつ必要なの。アレクはイザベラに対抗する力が欲しかったはず。今はイザベラに関係ないから必要ないって言うの? 関係ないなんてわからないのに。
< 146 / 177 >

この作品をシェア

pagetop