運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 言いたいことはたくさんあったが、セレナはきゅっと口をつぐんだ。

「わかればそれでいい」

 アレクはスッと視線をそらすと、「行ってくる」とつぶやいて、背を向けた。

 力強さのある背中がとても遠くに感じる。彼は私のために存在してるんじゃない。国を背負ってるんだと突き放されたようにも感じてしまう。

「いって……らっしゃい」
「……うむ」

 小さくうなずいて、アレクは立ち去る。その背中が廊下の角を曲がって見えなくなるとすぐ、セレナはくるりと振り返ってエマに言う。

「私も出かけます。すぐに準備を」

 気づかう表情をしていたエマの目が、これ以上ないほど見開かれる。

「お、お出かけになるのですか?」
「べナールと言えば、アルヴェインの森があります。そこに魔獣が現れたとなれば、イザベラに関わるものの可能性が高いです。アレクの身にもしものことがあれば、私がここにいる理由もなくなるんですよ」
「ですが……」
「ローブを用意して」
「セレナ様おひとりでは行かせられません。聞き入れてくださらないなら、私も一緒にまいります」

 エマの目は真剣だった。本気で行くと言ってるわけじゃない。そう申し出れば、あきらめると思ってるのだ。

「いいわ。馬車を用意して。まずは、メルンまで行きましょう」
「かしこまりました」

 エマは引き下がらなかった。

 慎重に、セレナはうなずいた。エマを預かってほしいと、リディアにお願いしよう。そうすれば、彼女が危険にさらされることはない。

「すぐにご準備いたします」

 エマは深々と一礼したあと、メイドを呼ぶと、ローブを運んでくるよう指示した。
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