運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「……申し訳ありません。ここにはもう二度と戻らないとお約束しましたのに」
「ルーガもあなたが懐かしくて連れてきたのでしょう。今回ばかりは特別ですよ」
「はい、わかっています」

 気まずそうなオリオンには、いつものような皮肉めいたそぶりがまったくなく、セレナは彼にこっそりと尋ねる。

「オリオンさんは天穹宮にいたんですか?」
「まあ、そうですね。司祭になるべく、修行をしていましたから」
「そうだったんですか。それなのに、闇の魔法が扱えるんですね」

 天穹宮は聖魔法を統べる世界であり、聖属性以外の魔力は全て無効化される。そして、精霊たちも魔力を最小限に抑えたままで無邪気に暮らせる楽園なのだと。

 ああ、そうか。だから、ルーガは地上で本来の姿を見せ、聖域ではあのような小さな姿となっているのだ。

「セレナさん、その話はここでは」

 珍しく、オリオンが気弱にささやく。首をかしげると、ライナスが穏やかにほほえむ。

「オリオンの罪は、じゅうぶんに償われましたよ。天穹宮に戻すことは戒律により叶いませんが、魔術師団長の地位は居心地がよいのではありませんか? あなたの魔力がアルナリアを守る姿はいつでも見ていますよ」
「許されるとは思っておりません。しかし、そのように言っていただけると、この気持ちも救われます」

 ライナスはゆっくりうなずくと、手のひらを奥の方へ示す。

「中へご案内しましょう。二千年前に起きた真実をお話せねばなりません」
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