運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい



 セレナはベッドの上で仰向けになり、じっと天井を見上げていた。困ったことに、まったく眠れない。

 まるで物語の中に迷い込んだような非現実に疲労する一方で、リディアの話してくれた魔女の情報に高揚を感じていた。

 災厄の魔女イザベラとは、どんな魔女なのだろう。復活の予言とは、いったい……。

 セレナは体を横向きにすると、ぎゅっと目を閉じた。しかし、頭の中は今日の出来事を整理しようと、せわしなく働いていた。

 リディアは大陸の地理に詳しいだけでなく、未知の世界に興味があり、メルン伯爵が許すなら、世界各地を旅したいという願望を持っていた。

 自身も、考古学者である父の影響を受けて、大学卒業後は世界へ飛び立つつもりでいた。だからこそ、リディアとのおしゃべりが、あたりまえの日常のようで、楽しく過ごすことに違和感はなかった。

 しかし、以前の生活も鮮明に覚えている。たしかに、御堂星麗奈として生活していたというはっきりとした記憶だ。

 自身の通っていた大学は、人文学部歴史学科で、『古代の物語に描かれる、神秘的な力と儀式の歴史的背景』というテーマで卒論を書いていた。

 皮肉にも、自身の研究テーマに合致しそうな中世ヨーロッパの世界観の中に今はいる。たった数時間前は、徹夜明けでふらふらしながら、睡魔と戦っていただけなのに。

 あの日は夕方から居酒屋のアルバイトに出かけた。間の悪いことに、さぼりぐせのある先輩が突然休み、残業することになった。終わったのは深夜2時で、この際、二日連続の徹夜でもいいやと論文の下書きに夢中になったのが、運のつきだった。

 昼前に、疲れた体のまま電車に乗った。連日の徹夜と、じりじりと暑い日差しは体にこたえた。研究室へ向かう途中、めまいに襲われ、視界が暗転した。次の瞬間には階段を転げ落ち、硬い段差に頭を激しく打ちつけていた。

 大丈夫ですかっ? 聞こえてますかっ? 誰かが叫んでいたが、答える気力はなく、だんだんと冷えていく身体だけを感じていた。
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