運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 そんな思考を振り払うように、窓の外を眺めた。城壁の向こうからは祭りのような喧騒が聞こえ、鐘の音が遠くで鳴り響いている。王太子の帰還を祝う歓声はまだ続いているようだ。

「ずいぶん、にぎやかですね」
「ええ。殿下が討伐から戻られたのですもの。アルヴェインの森には恐ろしい魔物が住むと言われていますから、ご無事の帰還を喜ぶのは当然なんですよ。……とはいえ、セレナ様はお疲れでしょうから、ゆっくりお休みくださいませ」

 その言葉にうなずいたところで、扉を叩く硬い音が響き、重々しい声がする。

「俺だ。セレナはいるか?」

 その冷たい声音に、セレナの体はびくりと強張る。早速、アレクがやってくるとは思ってなかった。

 静かにエマが扉を開けると、アレクが姿を現す。とたん、部屋の空気が一変した。威圧感が、優しい庭園の光さえかき消すように流れ込んでくる。

 気が重くなるのを感じながら、セレナは立ち上がり、頭をさげる。

「……あの、素敵なお部屋を用意してくださり、ありがとうございます。客人として扱っていただけるなんて思ってなかったので。本当に、感謝しています」

 高待遇で迎えられたことにお礼を伝えると、アレクは冷ややかなまなざしでこちらを見据えたまま、短く答える。

「いや。俺も少々、気が立っていた。勝手に連れてきたのだ。居場所ぐらい用意するのは当然だ」
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