運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「最近、アルナリア各地に魔物が多く出現しているんです。その討伐帰り、この洞窟を見つけて、魔物の棲家ではないかと確認のために中へ入ったんですよ。そうしたら、あなたが倒れていたので驚きました」

 なのに、いきなり剣を突きつけてくるなんて。まるで魔物と勘違いしたみたいな言い分だ。

 憤慨しつつ、セレナは周囲を取り巻くほかの兵士たちへと目を向けた。言われるまで気づかなかったが、確かに彼らは血なまぐさい匂いをまとっている。鎧には細かいすり傷があり、嘘を言っているようにも見えない。

「も……、もしかして、このあたりにも魔物が?」

 美しい大自然だからこそ、人の手があまり加わっていないと先に気づくべきだった。セレナがおびえてテオに駆け寄ると、アレクが口を開く。

「ここにはいないようだ。……どういうわけか」

 意味ありげにじっと見つめられ、セレナは一瞬にして緊張した。

 何かを疑われているようだ。といっても、この世界のことは何もわからない。わかっているのは、大学の階段から転落したあと、この世界に紛れ込んでしまったということだけだ。

「どうした。おびえてるように見えるが、何か企みでもあるのか?」

 挑戦的な声音に、セレナはどこまで話すか迷ったが、アレクの指がふたたび剣に触れるから、覚悟を決めるしかなかった。

「企みだなんて、何も。じ……実は、自分の名前は覚えていても、この世界のことや、どうしてあの洞窟にいたのかは、何も覚えてないんです。あの、私は何か、罰せられるのでしょうか?」

 胸に手をあてて尋ねると、アレクはほんの少し考え込むしぐさを見せた。固唾を飲んで見守るが、意外にもあっさりと彼は、くるりと背を向けた。

「詳しい話は王都で聞こう。ついてこい」
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