運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「……は、初めて……お会いしますわね?」

 ようやく、彼女は弱々しく口を開いた。

「え……、あ、はい」
「……クラリス・サマセットと申します。あ……あなたのお名前をうかがってもよろしいですか?」

 サマセット……では、彼女は間違いなく、サマセット公爵のご令嬢。なるほど。レースをふんだんに使った、とてつもなく豪華なドレスを着ているし、銀色の長い髪はさらさらで、品のある顔立ちをしている。

 しかし、意地悪そうには見えない令嬢だが、もし、恥をかかせようとスカートをつかんだのだとしたら、これはわかりにくい嫌がらせ? でもなぜ……。セレナはハッとする。もしかしたら彼女は、アレクの婚約者候補かもしれない。

「あ、えっと……私はセレナ……と申します」

 ぎこちなく名乗る。すると、クラリスは小さく首をかしげた。

「あなたのお父さまに爵位はございませんの?」
「え……っと、それは……」

 どきっと胸が跳ねた。こんな観衆の面前で、言いにくいことを聞いてくるなんて。どうしよう。いくつか、貴族の名前は思い浮かぶが、まさか公爵令嬢相手にうそをつくわけにもいかない。

 少しずつ後ずさると、スッと後ろに誰かの立つ気配があった。万事休す。もう逃げられない。

「彼女はセレナ・べナールだ、クラリス」

 頭上から冷ややかな声が降ってくる。アレクだ。今ばかりは、こんな冷たい声音も救いの声に聞こえるから不思議だ。

「べナール……ですか?」

 クラリスは納得いかないようにつぶやいた。
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