運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「セレナは、ルミナリア王国時代、べナール地方を治めていた領主、べナール伯爵の末裔。アルナリアではその爵位が認められていないからな、名乗るのを迷ったのだろう」
「……知りませんでした」

 今の説明で納得したようだ。もじもじと、クラリスは指をもどかしげに胸の前で組み合わせる。

「恥じる必要はない。セレナも、今後はべナールの名を堂々と名乗るが良い。べナール伯爵はアルヴェインの森を管理し、王家の縁戚となるほどの有力貴族だった。我が国に間接的ながらも、貢献しているのだからな」

 セレナはぽかんと口を開いた。よくも、こんなありもしない話を、平然と貴族たちに聞かせるものだ。

 黙っていると、アレクにじろりとにらまれて、セレナはハッと頭をさげる。

「お気づかいありがとうございます、アレクシス殿下。今夜は素晴らしいパーティーにお招きいただき、感謝申し上げます」
「うむ。存分に楽しむがいい」

 楽しむって……もうじゅうぶん疲れ切ってるんだけど。セレナが愛想笑いを浮かべる横で、クラリスがまだ何か気になっているのか、じっとアレクを見つめて問いかける。

「アレク様、セレナさんが婚約者になられる方ですか?」

 ざわっと周囲がざわめく。しかし、驚くのはこちらも同じだ。びっくりするセレナなどかまわず、アレクは苦笑する。

「そうはっきり言うものじゃないと、前から言っているだろう。俺と結婚したい娘などいないことは、おまえが一番よくわかっているはずだ」
< 32 / 177 >

この作品をシェア

pagetop