運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「えぇ……っと」

 まっすぐにこちらを見つめてくる純真な目に、セレナはたじろぐ。何をそんなにクラリスは根掘り葉掘り知りたがるのか。

「べナールからお越しになったと聞いて、もしかしたらと思ったのですが……」

 アレクが想定外の設定を決めてしまうから、話を合わせないといけない。どう説明しようかと悩むが、やはりここは余計なことを言わないに限るだろう。

「実は……助けていただいた折、近々パーティーが開かれるということで、殿下のお気づかいで参加することになりまして」
「やはり、あなただったのですね。あまりお見かけしない方でしたので、気になってつい……お声をかけてしまいました」
「かまいません。では、私はこれで……」

 切り上げようとするが、クラリスはなおも話しかけてくる。

「待ってください。……あなたも、アレク様に薔薇を捧げられたら、お受け取りになるのですよね?」
「薔薇……?」

 なんのことだろう。首をかしげてしまう。

「あ……ご存知ないのですね。婚約者選定パーティーでは、アレク様が婚約者にと望む令嬢に薔薇を差し出すのです」

 なるほど。ありがちな話ではある。

「お受け取りになるおつもりは……ありますか?」

 クラリスは重ねて尋ねてくる。やっぱり、それが気になっているようだ。ライバルを見定めに来たのだろうか。どう考えても、公爵令嬢であるクラリスの方が、一番王太子妃に近い立場にあるように思うのだが。

「みなさんが見ていらっしゃいますから、ここでは……」

 婚約者候補は何人いるのだろう。誰に話を聞かれているかわからないし、あらぬ嫉妬を買いたくもない。

 やんわりとごまかすと、クラリスはハッとする。まったく空気の読めない人でもなさそうだ。

「わ、私としたことが……ごめんなさい。ただ、心配で……」
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