運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「さあ、みんなの前で見せてごらんよ。殿下お気に入りの姫君の舞を」

 リチャードがにやりと笑い、当然のようにセレナの手を握る。熱を持ったもう片方の手のひらが背中に触れると、思わず体がこわばった。すでに観衆は二人を取り囲み、期待と嘲笑が入り混じった視線を向けている。

 今さら、逃げ出すわけにはいかない。しかし、ダンス未経験のセレナの足はまったく言うことを聞いてくれなかった。

 じわりと背中に嫌な汗が浮かぶ。それに気づいたリチャードは、片方の唇を引き上げて嫌味に笑った。

「おやおや、どうしたんだい? やっぱり踊れないなんて言わないよね。……さあ、優雅な足さばきを見せてくれ」

 いきなり、ぐいっと引っ張られ、つま先が伸びた。体を支えきれずに倒れそうになるのを、リチャードが受け止め、さらに回転させられる。セレナは振り回され、あちらこちらから笑いが起きる。

 ほおがカッと熱くなるのを感じた。売られたケンカに、このまま引き下がるわけにはいかない。

 グッと怒りをこらえて視線を周囲に向けたとき、クラリスのダンスが目に入った。恥ずかしそうにたどたどしく踊っているように見えたが、彼女をエスコートするレオンの動きが、リチャードのそれとまったく同じことに気づいた。

 もしかして、クラリスは……。

 セレナは彼女を注意深く観察し、同じように足を動かす。

「おっ、ちょっとは踊れるみたいじゃないか。感心だねぇ」
「私だって……このぐらいっ」

 負けずに言う。しかし、このダンスがクラリスの動きをなぞっただけの借り物だと、周囲はすぐに気づくだろう。これでは、リチャードの鼻をあかせない。
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