運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「必死だね。それもそうか、君の恥は、君を招待した殿下の恥にほかならないからね」

 ああー、もう我慢ならない!

 ……どうしてこんなにも腹が立つのか。昔から負けん気は強い方だったけど、興味のないダンスをバカにされるのは、気にするようなことじゃないのに。

 くるりと体を回されて、セレナはこちらをじっと見ている男に気づいた。ワイングラスを片手に、険しい表情をしているのは、アレクだ。

 ますます、焦りか怒りかわからない感情が込み上げる。アレクに踊れない娘だなんて思われたくない。彼にだけは……。

 それだけじゃない。自分のせいで、アレクまでもが嘲笑の的になると思ったら、とんでもなく腹立たしかった。

「勝負はあったかな? 殿下の恐ろしい顔を見れば、君に勝算がないのはあきらかだ」

 耳もとでささやくリチャードを、ぎゅっと下唇をかんでにらみつけた。そのとき、足もとが急に軽くなり、ふわりとドレスが揺れた。

 あれ?

 気がつけば、自然とリチャードに合わせて体が動き、足がリズムに乗って前に後ろにそろう。まるで、何かの魔法にかけられたみたいに。

「す、すごい……すごいじゃないか」

 リチャードの瞳が、大きく見開かれた。セレナもまた驚きで息をのんでいた。ぎこちなかったはずのステップが、自然にワルツの流れに乗っている。足の動きに体が追いつき、くるりと旋回しても、バランスを崩すことはなかった。

「君……踊れるんだな」

 リチャードの声が耳元で柔らかく響く。いつの間にか、周囲の笑い声は嘲笑ではなく、賞賛に変わっていた。
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