運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 大広間の喧騒を離れ、慣れ親しんだ部屋の扉が閉まると、ほっと息が出た。このままベッドに倒れ込みたいぐらいの疲れを感じていたが、あのことをどうしても聞きたくて、水の入ったグラスを運んでくるエマに尋ねた。

「……エマ、ちょっといいかしら」

 グラスをテーブルの上に置くと、エマはまぶたを伏せて小さく頭をさげる。

「さっき、あるうわさを聞いたんです。あんまり大きな声では言えないけれど……」

 セレナはそっと辺りをうかがう素ぶりを見せて、声を押し殺す。

「殿下の婚約者には、必ず不幸が起きるって……。本当なの?」
「セレナ様、それは……」

 言いよどむエマは気まずそうな表情を見せるが、完全に否定する様子はなかった。

「クラリス嬢が言ってたのよ。会場にいた人たちだって、殿下の婚約者が何人も変わってることを普通に受け入れてるようだったし、単なるうわさじゃないですよね?」
「……何からお話をしたらいいのか」
「なんでもいいわ。今までの婚約者には、どんな不幸が起きたの?」

 エマの両手を握りしめ、正面からじっと見つめて返事を待った。そのとき、部屋の扉が軽くノックされ、静かな声が響く。

「入ってもいいか?」

 セレナはエマと顔を見合わせた。パーティーの主役が、なぜここに来たのだろう。エマがあわてて扉を開くと、いつもの不機嫌そうなアレクが立っていた。
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