運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「おまえが部屋へ戻ったと聞いて訪ねてきた」
「あ……ちょっと疲れてしまって……」

 わざとらしくひたいに手をあてると、彼は小さな息をつく。

「あれほど見事なダンスを披露したのだから仕方あるまい。しかし、なぜアードラーの子息と踊ったのか、説明してもらおうか」
「アードラー?」

 ああ、そういえば、彼はリチャード・アードラーと名乗っていたか。

「何か問題があるんですか?」
「アードラー家は、旧ルミナリア王家の流れを汲む伯爵だ。それも知らずに手を取ったのか」

 アレクは面白くなさそうに鼻を鳴らす。

「あ、あれは……あちらが勝手にけんかを売ってきたので……」
「けんかだと?」
「それはその……王太子の妃候補のくせに、ダンスもろくにできないのかってバカにしてきて……だから、つい……」

 だんだんアレクの目の奥が怒りに満たされていくから、セレナは気まずげにつぶやいた。

「そんなくだらない挑発に乗るな。いいか、金輪際、アードラー家と懇意にするような真似はやめろ」
「別に懇意には……」
「おまえがどうであろうと、周囲が誤解するような真似はするなと言ったんだ」
「……は、はい。申し訳ありませんでした」

 セレナは素直に頭をさげ、こちらをにらみつけているアレクをふしぎそうに見上げる。

「まだ……何か?」
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