運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 それを言いに来ただけじゃないのだろうか。はやく出ていってほしいとも言えず、首をかしげると、アレクは口もとに手を持っていき、わざとらしく咳払いをする。

「その……なんだ、今夜はおまえと踊ってみたいと思ってな」
「は……?」

 ぽかんと口を開けると、なぜかエマが赤くなり、アレクはほおをひくつかせた。

「嫌なのか」
「あ……いえ……、あまり上手ではないので……」

 さっきは何によってか難を逃れたが、もう一度、うまく踊れる気はしない。

「あれほどのものを見せつけておいて、それが断る理由になるとでも思ってるのか」
「でも……もう会場には戻りたくないんです……」

 おずおずと申し出ると、アレクは腕を組み、少々思案げにしたが、ふとバルコニーの方へ目を移す。

「たまには月明かりのもとで踊るのも悪くはないな」
「ここで踊るんですか?」

 どうして? あれは、我こそが王太子妃になる令嬢だと見せつけるために行われているもので、誰も見ていない場所でのダンスにどんな意味があるのだろう。

「今夜は特別だ」

 アレクはセレナの手を取ると、言葉少なに誘う。バルコニーに踏み込むと、夜風が柔らかく吹き、月光が二人を照らす。

「じゃあ、始めよう」
「はい……」
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