運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 言いかけて、口をつぐむ。アレクと踊ったあの日の夜を思い出すだけで、恥ずかしさのあまり、体が熱くなってしまう。

 しかし、あの日以降、廊下を渡るアレクの姿を遠目に見ることはあっても、彼が部屋まで訪ねてくることはなかった。

「てっきり、セレナさんに薔薇を捧げたものと思ってましたわ。婚約者決定の報告をなさらないのは、不幸が起きることを心配して……と思っていました」
「それ、前にも言ってましたね。メイドたちのうわさで少しは聞きましたが、なんでも恐ろしい思いをしたご令嬢が、自ら婚約を辞退されてきたとか」
「そうですわ。令嬢からの辞退は、本来ならば、決して許されることではありません。しかし、アレク様は令嬢たちを咎めることなく過ごしてきました。本日、セレナさんをお招きしましたのも、そのお話をしなければと思っていたからなんです」
「詳しく、教えてもらえますか?」
「もちろんですわ。セレナさんにはご無事に結婚されていただきたいですもの」

 セレナは苦笑いを浮かべる。アレクとの結婚は、彼女にとって既定路線のようだ。

 胸にそっと手をあてたクラリスは、心を落ち着けるように息を吐き出し、口を開く。

「アレク様には、これまで五人の婚約者がいました。一人目の婚約者は私の上の姉、メアリーでした」
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