運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「上の姉……というと、クラリス様にはお姉さんがおふたり、いらっしゃるんですね」
「そうです……あ、あのっ」

 いきなり、クラリスが前のめりになるから、セレナは首をかしげた。

「何か?」
「その……、クラリス様というのは、おやめくださいませんか? く、クラリス……でじゅうぶんです」

 思いがけない提案に、セレナの丸い目がますます丸くなる。

「公爵家のご令嬢を呼び捨てするなんてそんな……」
「ご迷惑ですか? 私、セレナさん以上に仲良くできる方にはもう、お会いできる気がしないんです……」

 なぜか、ずいぶんと気に入られてしまっているらしい。まあ、あのパーティーでの様子からすると、彼女はさまざまな悪意にさらされてきたのだろう。だから、普通に話せるだけでうれしいし、幼い頃から知り合いのアレクやレオンしか信用していないのかもしれない。

「私が呼び捨てで、セレナさんと呼ばれるのは……ちょっと」
「では、セレナとお呼びしてもよろしいですか?」

 パッと顔を輝かせてこちらを見つめる淡いグレーの瞳があまりにも純粋で、断れる気がしない。

「私はかまいませんが……」
「決まりですね。本当に……うれしいです」

 感慨深そうに胸に手をあてる彼女は、純真無垢なお嬢様そのものだった。公爵令嬢である上に、思ったことを遠慮なく口に出してしまうところがあって、周囲の評判はあまりよくないのだろうが、裏表のないわかりやすい人のようだ。

 それならと、セレナは身を正してクラリスに改めて向かい合う。
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