運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「レオン様のお話では、ただ影が見えるだけではすまなかったそうです。影が言葉を発した……とか」
「影が話すんですか?」
「渡さない……と、呪うような女の人の声が聞こえてくるそうなのです」

 渡さない? 婚約者に影が牽制したってこと?

 それなら、アレクを渡したくないって意味だろうか。考え込むセレナに、クラリスは続ける。

「ほかにもあるんです。街を歩けば、黒い鳥に追いかけ回されたり……とにかく不吉な出来事が続いたそうなんです」
「黒い鳥って……」

 カラスだろうか。幻聴が聞こえるのは、メアリーの幻覚と同じ精神状態だった可能性はあるが、カラスとなると、気にしすぎとも言えなくない。

 しかし、クラリスは深刻そうな表情を崩さない。

「アルナリアでは昔から、黒い鳥は魔女の化身だと言われていますから」
「……じゃあ、魔女に狙われていると思ったんですね」

 そういう話ならわからなくはないか。不吉なことが続く……それだけで、令嬢たちは心底おびえ切ってしまったのだろう。

 とすると、黒い影の正体は……魔女?

 だけど、本当にそんなことってあるんだろうか。セレナはますます気になって尋ねた。

「では、四人目の婚約者の方には何が?」

 クラリスはふたりと言った。メアリーとふたりの婚約者。では、四人目と五人目には、また何か違う不幸が起きたはずだ。

「実は……」

 言葉を濁すような息をついたクラリスは、まぶたを伏せる。

「言いにくいことなら、言わなくても大丈夫です。とにかく、怖い思いをされたことはわかりましたから」

 あとは、こちらで調べればいい。婚約者たちの前に現れる黒い影の正体が、魔女かどうか。
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