運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「ただ?」
「五人目の婚約者、アドリア・ハートウェル侯爵令嬢は……、イザベラの怒りに触れたと言われています」

 クラリスはおびえるように目を泳がせ、ひざの上でぎゅっとドレスをつかんだ。

「それって……、いつもと違う何かがあったんですか?」
「アドリアさんは亡くなったんです」
「え……」

 セレナは一瞬、呼吸を忘れ、喉をつまらせた。

 影を見た。声を聞いた。鳥に追いかけられた。これまでのものとは、ずいぶん違う。

「アドリアさんとの婚約は順調でした。黒い影を見ることはあったようでしたが、お強い方で、おびえる様子はなかったそうです。今回はうまくいくだろう。みなさんがそう安心していた矢先、アドリアさんは王宮にあるイザベラの鏡の存在を耳にされたんです」
「そんなものがあるんですか?」

 いったい、この国と魔女イザベラの関係はどういうものなのだろう。

「魔女イザベラは二千年前、アルヴェインの森にあるほこらに封印されたと言いますが、その後もイザベラの影を見たといううわさは絶えなかったそうです」

 ということは、完全に封印できなかったのか。それとも、それほど魔女イザベラの力が強力なのか。

 クラリスは続ける。

「ルミナリア時代の王家は、その影が現れる鏡をイザベラの鏡と名付け、王宮に保管しました」
「それが、アルナリアでも引き継がれているんですね?」
「はい。鏡は、王宮の限られた者しか立ち入りを許されない塔にあるそうです。レオン様もいまだ目にしたことのない貴重な鏡だそうなのですが……アドリアさんはどういうわけか、それを壊してしまえば、もうイザベラにおびえる必要はないと考えたようでした」
「それで……?」
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