運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「王太子の婚約者としての地位を使い、王宮に忍び込んだのです。その翌日、アドリアさんは塔の階段下で息絶えているのを発見されました」

 まぶたを伏せるクラリスのつらそうな表情に負けないショックを、セレナも受けていた。

 これまで婚約者に起きた不幸は、ただ単に怖がらせるようなことばかりだったのに、アドリアはあきらかに違う。彼女は死んだのだ。

『俺と結婚したい娘などいないことは、おまえが一番よくわかっているはずだ』

 アレクの放った言葉が、いまになって背中に重くのしかかってくる。あのとき、アレクはどんな気持ちだったのだろう。

 もしかしたら、自分のせいで婚約者が呪い殺されたかもしれない。そう考えたのだとしたら、苦しくて悔しくて、想像を絶するほどの失望にさいなまれたのではないか……。

 セレナはゆっくり立ち上がると、こちらを見上げるクラリスを安心させるように力強くうなずく。

「私が、調べてみますね」
「調べるって?」
「不思議な現象にはだいたい、確かな理由があるものなんです。たとえば、錯覚や偶然……今回がそうとは言いませんが、調べてみる価値はありますよね」

 アドリアだって、イザベラの怒りに触れたなどと言われているけれど、その実は階段から足を滑らせて転落しただけかもしれない。皮肉なことに、自分がこの国へ紛れ込んでしまったのは、その経験があったからだ。

 クラリスは急に目を輝かせ、胸の前で指を組み合わせた。

「たくましいんですね、セレナは。わかりました。アレク様には、セレナをお守りするよう、私からもお願いしておきます。ですから、王宮にあるイザベラの鏡にだけは、絶対に絶対に、おひとりでお近づきにならないでくださいね」
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