運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 ぺこりと頭を下げると、「はやくしろっ」と離れたところで白馬に乗るアレクが大声をあげる。何もかもが気に入らないように不機嫌だ。

 偉そうな人ね。世界が自分中心に回ってると信じてるタイプの人みたいね。

 セレナは心の中でグチりつつ、テオに続いた。テオの黒毛馬は燃えるような瞳に、鋼のごとく頑丈な体つきをしていて、頼もしさがにじんでいた。一方、アレクの白毛馬は絹のような毛並みを誇り、気品をまとったたたずまい。……主人を間違えてないかしら、などと思いながら、セレナはテオに抱き上げられ、黒毛馬にまたがった。

「アレク様、夕方にはメルンに着くでしょうから、セレナさんに馬車をご準備してもよいですか? この服装では何かと目立つでしょうし、ドレスのご用意も」

 テオの視線が自身に注がれているのに気づいて、セレナはハッとする。そうだった。いつも大学へはパンツスタイルでしか出かけないが、今はスカートを履いていて、おかしいと気になっていた。

 目線を落とすと、黒いドレスが目に入る。レースも何もない、シンプルなデザインだが、つまんで透かしてみると、紫色に光っているようにも見える。少なくとも、貴族の令嬢が好んで身につけるような色味ではない。

「好きにしろ」
「では、そうさせていただきます。よかったですね、セレナさん」

 にこりとほほえむテオは、どこかしたり顔をしている。意外としたたかで、アレクの扱いを一番よくわかっている人なのかもしれない。

「あの、あなたは?」
< 6 / 177 >

この作品をシェア

pagetop