運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 宮殿前にある石畳へ一歩足を踏み入れると、広場の中央に人だかりが見えた。

「何かあったのかしら」

 リディアが心配そうにつぶやいたとき、ひときわ切羽詰まった声が響き渡る。

「魔物が……! 魔物が川の上流をふさいじまってるんだっ。はやくなんとかしてくれぃ!」

 セレナとリディアは顔を見合わせると、人だかりをかき分けて進んだ。

 その中心では、やせ細った老人が、兵士の胸倉をつかむようにして必死に訴えていた。周囲の兵士たちは困惑した様子で見守っている。

「あっ、テオさんっ」

 兵士たちの中に、セレナは見知った顔を見つけて声をあげた。

「ああ、セレナさん。それに、リディア嬢まで」
「テオドール様、ごきげんよう」

 駆け寄ってくるテオに、リディアはドレスをつまんで、優雅に頭を下げる。

「メルン伯爵から連絡はいただいてます。セレナさんと早速、お会いできたようですね」
「ええ、これも何かのお導きかと。しばらく王都に滞在する予定ですから、アレクシス殿下にもごあいさつさせていただきたいのですけれど」
「もちろんですよ。すぐにでもご案内したいところですが……」

 テオは気まずそうに、老人の方へと目を移す。

「魔物が……って聞こえたんですが、何かあったんですか?」

 セレナが尋ねると、彼は困ったように後ろ頭に手を置いた。

「あの方はノーデルからやってきたんですよ」

 兵士になだめられ、地面にへたり込む老人を見て、彼はそう言った。
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