運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「あの雲が何かあるのかい?」
「たぶん、もう少ししたら雨が降ると思って」
「ほ、本当かい? それはっ」

 老人が肩をグッとつかんでくるから、セレナは驚いて尻もちをついた。

「あっ、はい。見てください。あの雲は、積乱雲と言って……」

 雲をさした瞬間、指先がほわっと青白く光る。

「えっ……?」

 今のは、何?

「せき……がなんだって?」
「あ、ああ、はい。積乱雲があるので、じきに雨が降るはずなんです」

 老人がふしぎそうに耳を傾ける横で、セレナはふたたび、大きくふくれ上がる雲を、おそるおそる指差した。

 途端、指先から青白い光が発せられ、空へと向かって細く長く伸びていく。さっきのは、見間違いでもなんでもなかった。

 戸惑っていると、灰色の雲は一気に黒く染まり、北の山脈から王都全域を包み込むように広がった。次の瞬間、轟音とともに土砂降りの雨が広場を襲う。辺りは騒然とし、人々が一目散に逃げ出していく。

「セレナさんっ! はやく城内へっ」

 雨の跳ね返る地面に座り込んでいたセレナは、テオに手を引かれて、リディアとともに宮殿の入り口へ向かって走った。

 あのおじいさんは……。

 振り返ると、店先で兵士に抱きかかえられ、喜んで涙ぐむ老人が見えた。

 よかった。無事だわ。

 息をつくと同時に、セレナたちは入り口に駆け込んでいた。

「急に……ひどい雨ですわね。こんなにも雨が降るのは、王都でも久しぶりではありませんこと?」
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