運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 オリオンが指を曲げてそれを握り込むと、炎はシュッとつぶれ、代わりに黒い何かが弾け飛び、翼を持つ小さな影がひらりと現れる。

 パサリパサリと乾いた羽音を立てて舞い上がったのは、黒曜石のような瞳をしたコウモリだった。

 セレナは思わず一歩下がる。小さな生き物なのに、その存在からはぞわりと鳥肌の立つ冷気が漂っている。

「それは……コウモリですよね?」
「ええ。魔蝙蝠(まこうもり)と言います」

 オリオンは愉快そうに口角をあげた。蝙蝠は彼の肩にとまるでもなく、宙に浮かんだまま、ぎょろりとセレナを見据えていた。

「私の目であり、耳である存在。ずっと、あなたを見守っておりますよ」
「見守るって……監視ですよね?」

 肯定するように、オリオンは目を細める。

「ご安心ください。魔蝙蝠は闇の召喚魔法によって呼び出せる下級の魔物ですが、これを召喚できるのは、王宮で私だけですので」

 闇の召喚魔法とか……、その響きだけでも全然、安心できないんですけど。

「ずっとって、いつから?」
「もちろん、最初から」
「もしかして、あのほこらから?」
「アレク様が魔物の討伐へ出かけるというのに、魔術師団長の私が同行しないとでもお思いですか?」

 アルヴェインの森からメルンへの移動中も、王宮へ来るまでの道のりでも、まったく彼の存在には気づかなかった。アレクが意図してのことだったのか、はたまた、ひねくれ者に見えるオリオンの采配か……いずれにせよ、彼に隠しごとをするのは得策じゃないだろう。

 セレナは大げさにため息をつく。

「わかりました。私もちょっと気になっていることがあるんです」
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