運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「アレク様はずっといらだっていましたからねぇ。自身の婚約者を選定する場で、セレナ様が他の殿方と楽しそうに踊っておられるのを見たときの顔と言ったら……」

 こらえ切れずにクスッと笑うオリオンを、アレクは凝視するようににらみつける。すると、オリオンは笑いをかみ殺し、大げさに両手を広げる。

「まあ、そういうわけです。アレク様は無自覚でおられるようですが、気に入りのご令嬢がもしイザベラだったら……とご心痛だったのですよ。少なくとも、今のセレナ様から災厄の魔女の持つ禍々しさはまったく感じられません。絶世の美女と言わしめたイザベラの片鱗はあるかもしれませんがね、それだけでは魔女の証明にはなりません」

 何をどこまで本気にしたらいいのかわからない。誰も彼も誤解しているようだが、アレクが自分を気に入る機会がどこにあったというのだろう。

 セレナが微妙な表情を浮かべると、オリオンは右手を差し出してくる。

「どうでしょうか、セレナ様。私のもとで、闇魔法を習う気はありませんか?」
「私が魔法を……?」

 オリオンの手を見つめる。その手を取れば、契約が完了するとばかりに、彼は手を差し出したままだった。

「ええ。このまま無意識で魔法を使われては、王都を危険にさらす可能性があります。そうなれば、アレク様はあなたを放っておくわけにはいかなくなる。逆に、正しい知識を身につけ、その力を有意義に使うことができれば、これほど心強いものはないでしょう」
「選択しろって言ってるんですか?」
「そうです。アレク様に捕えられる人生か、アレク様とともに生きる人生か。私には迷う理由はないと思いますが」
「私は……」
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