運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 と、威勢のいいことを言ってはみたものの、魔法が使える気はまったくしない。ましてや、闇属性の魔法となれば、普通は人間に扱えるものではないんじゃないだろうか。

 しかし、オリオンは闇魔法が使える。ただほかの魔術師たちは使えない。この世界で、闇魔法が使える者というのは、どのような立ち位置にあるのだろう。

 オリオンに聞いてみるしかないが、彼は「明日から魔法の練習を始めましょう」と楽しげに言って、立ち去ってしまった。かなりマイペースな人だ。こちらに合わせて甲斐甲斐しく面倒を見てくれるようには思えない。

 アレクに尋ねることもできたが、二人きりは気まずくて、思わず逃げ出してきてしまった。

「ああ……、わからないことだらけ」

 考えなきゃいけないことが多すぎる。セレナはため息をついて、庭園にあるベンチに腰かけた。

「あれも気になってるのよねぇ」

 クラリスにはイザベラについて調べてみると啖呵を切ってみたものの、どうするかはまだ考えていなかった。

 まず、何から手をつければいいのか。考えがまとまらず、咲き乱れる薔薇を眺めるばかりで時間だけが過ぎていく。すると、渡り廊下を歩いていく派手なドレスの令嬢が目についた。リディアだった。

「リディアさんっ、どちらへ?」

 ドレスの裾を持ち上げながら、セレナが急いで駆け寄ると、リディアはうれしそうに表情を明るくした。

「あらっ、セレナさんではございませんの。本日はお忙しいと聞いておりましたけれど、おひとりですの?」
「用事は済んで、時間を持て余してたんです」
「そうでしたの。でしたら、一緒に王立図書館へ行きませんこと?」
「図書館に……! 入れるんですかっ?」

 セレナは大きくまばたきをした。
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