運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「問題ありませんわよ。アレクシス殿下が王宮に住まわせているのですから、ここはもう我が家同然ですわよ」

 なんて勝手な……。あきれて言葉も出ない。

「セレナさん、行きますわよっ」
「あ、……はいっ」

 颯爽と歩き出すリディアに手を引かれるまま、セレナは長い廊下を進んだ。

 庭園に隣接する建物の一階に、王立図書館はあった。石造りの重厚な扉の前には衛兵が立ち、静かに入り口を守っている。

「本当に大丈夫でしょうか?」

 頭の中に、アレクの不機嫌な顔が浮かんだ。勝手に入ったりしたら、ますます機嫌を悪くするかもしれない。

「ご安心ください、セレナさん。私にお任せくださいませ」

 リディアは一歩前へ出て、身分を示す。すると、衛兵たちは無言で扉を開いた。

 大きくて重厚な扉の開かれる音が、地響きのように伝わってくる。まるで、未開の地に足を踏み込むような緊張感で、セレナはリディアに続いた。

「誰も……いなさそうですね」

 絨毯が敷き詰められた空間には、インクと紙の匂いだけが充満し、シンと静まり返っている。

「そうですわねぇ」

 ふたりで辺りをうかがいながら、中程まで進むが、人の気配すらない。セレナはほっと息をつく。ここなら、心置きなくイザベラの話ができそうだ。

「それにしても、どこから手をつけたらいいのかわからないぐらい、たくさんありますね」

 壁面いっぱいに収められた書物を見上げるセレナを見て、リディアが得意げに胸に手をあてる。

「大丈夫ですわよ。以前、ここにいらした魔術師の方に、イザベラに関する資料の場所をお聞きしたことがありますの。北の棚にあると教えてくださいましたわ」
「魔術師……?」
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