運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい



 空が茜色に染まりはじめたころ、覆い被さるように茂っていた木々が途切れ、視界が一気に開けた。丘から見渡せる坂の先に、灰色の城壁に囲まれた、赤褐色の屋根が連なる街並みが見える。

「……あれが、メルンですか? 大きな街ですね」

 王太子一行が小さな村の世話になるなんて絶対にないとわかってはいたが、それにしても立派な城壁に囲まれた街は、まるで要塞のようだった。

 すっかり驚いていると、テオが誇らしげな笑みを浮かべる。

「メルンは王都から離れていますが、重要拠点の一つなんですよ。すでに、使いの者が領主館に宿泊できるよう手配していますから、今夜はゆっくり休めるでしょう」
「領主館というと、メルンの領主様のお屋敷ですよね?」
「はい。メルン伯爵には、セレナさんと同じ年ごろのご令嬢がいらっしゃいます。身の回りの世話を頼んでみますので、ご安心を」

 見ず知らずの貴族の屋敷に泊まるという不慣れな環境をテオは見越してか、不安を取り除くように言ってくれる。

「……何をごちゃごちゃと。テオ、領主館に着いても、その娘から目を離すんじゃないぞ」

 乱暴に命じたアレクは、黄昏色に染まる白馬で一気に坂を駆けおりていく。

「お目当ての魔物が見つからず、殿下は少々イライラしているんですよ」

 遅れを取らないようにと、すぐさま彼の後ろを駆けていきながら、テオは気づかいを見せた。

「見つからなかったんですか?」

 荷馬車にはたくさんの戦利品があるように見えたが、それでも不十分だというのだから驚いてしまう。

「王都に戻ったら、作戦の練り直しですね。アレク様は真面目で責任感のある方ですから、はやく安心して暮らせる国にしたいんですよ」
「真面目……まあ、はあ……」
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