運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 テオの言葉に、セレナはどう返事したらいいかわからず、あいまいな返事をしてしまった。

 もちろん、責任感はあるのだろう。あの冷たい目が、身元のわからない自分を敵視しているように見えるのはそのためだ。

 そんな心の声を読んだみたいに、テオが穏やかな笑みを見せる。

「殿下はセレナさんを疑っているわけではありません。むしろ、巻き込まれてしまったあなたを気にかけているんですよ」

 それはあまりにも気づかいすぎだ。本心ではないだろう言葉はすんなり受け入れられず、沈黙してしまった。しかし、城壁が近づくにつれ、天を突き刺すほどの高さに圧倒されたセレナは、目を奪われずにはいられなかった。

「すごく高い城壁ですね。この街は……何から身を守っているんですか?」

 ここへ来るまで、魔物一匹見かけることはなかった。ほかにも何か意味があるのだろうかと尋ねたが、テオは首を横に振る。

「メルンはかつて、王都を魔物から守るための緩衝地帯として機能していたんですよ。その名残ではありますが、今でも魔物一匹寄せ付けない堅牢な城壁なんです」

 ということは、以前はこの辺りにもたくさんの魔物がいたのだろう。

「城壁が使われなくなって、どのぐらい経つんですか?」
「ああそれは……セレナさん、すみません……詳しい話はまたあとで」

 魔物が少なくなったのは、いつからだろう。興味本位で尋ねたが、不機嫌そうにこちらを見ているアレクに気づいたテオが、言葉を濁す。

 テオは馬からセレナを降ろすと、腕を組むアレクのもとへ素早く駆けていく。彼が門兵に何かを告げると、たちまち重たい門扉が開き、兵士たちがいっせいに門の中へと入っていく。

 どんどん先を行くテオの背中を見失わないように、セレナは必死に追いかけた。
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