運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 アレクが一冊の本を脇に抱えて立っていた。いつからいたのだろう。リディアも全然気づいていなかったようだ。あわててリディアが立ちあがろうとするのを、アレクは腕をあげて制し、こちらに近づいてくる。

「いま、その本を読んでいたな?」
「え……、ああ、はい。たまたま目についたので……」
「古代ルミナリア語が読めるのか?」

 セレナは手もとの本に視線を落とす。リディアが読んでいるものとは違う言語だと気づいてはいたが、書物自体は比較的新しいもののようだし、古代語で書かれているとは思わなかった。

「あの……まあ、読めなくはないです……」

 あいまいに答えると、彼は脇にかかえていた本を突き出してきた。

「これはなんと書いてある?」

 セレナは表紙をのぞき込む。そこに、さっきからずっと探していた名前を見つけて、驚きのあまり、まばたきを一つした。

「読めるんだな?」

 ハッとして、アレクを見上げる。いつものように不機嫌に怒っているかと思いきや、意外にも彼はひどく驚いたような顔をしていた。

「えっと……」
「読み上げてみろ」
「はい……。イザベラの備忘録……と書いてあるように見えます」
「ほう……」

 アレクは感心するような息をついた。

「イザベラって……、あのイザベラですの?」

 興味津々で駆け寄ってきたリディアは、本をのぞき込むなり、首をひねる。

「……どこの言語で書かれたものですの?」

 どうやら、博学であるリディアでも知らない言語らしい。読めると答えてしまって問題はなかったのだろうか。背中にヒヤリとしたものを感じながら黙っていると、アレクが口を開く。
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