運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「これはスピリトス語と言って、おもに天穹聖域で使われている言葉だ」
「天穹聖域ですって?」

 ひどく驚いたリディアは、セレナの手を握りしめる。

「天穹聖域は、精霊と人間が交わる世界と言われていますのよっ。空に浮かぶ島には天穹宮と呼ばれる場所があって、そこに教皇様がお暮らしになっているんです」

 リディアの声はますます高く弾んでいく。

「その世界で使われている言語となれば、古代ルミナリア語よりももっと古いもの……そんな文字が読めるなんて、すごいですわっ、セレナさん!」
「ええっと……」

 教皇は精霊たちとともに空に暮らしてるってこと? 情報が多すぎる。

「そうですわよね、アレクシス殿下?」

 戸惑うセレナなどおかまいなしなリディアに、アレクは苦笑いしたあと、静かにうなずく。

「今や、スピリトス語を使用する者は教皇しかいないとまで言われている。この本は、イザベラが残した記録を教皇が筆写したものだ」
「えっと……、では、教皇様はイザベラと関わりがあるんですか?」

 それが事実なら、一気にイザベラに近づいた気がする。しかし、期待とは裏腹に、アレクは首を小さく横に振る。

「めったに姿は見せられない方だ。ゆえに、この写本の真意を尋ねることはまだできていない」
「殿下も読めるんですね」
「大まかにはな。イザベラ本人が残したとされる自筆の記録は教皇が持っていて、すべての内容はつまびらかになっていないとされているが、これが読めるならば、イザベラについて少しはわかることがあるだろう」

 そっと突き出されたそれを改めてまじまじと眺めたセレナは、かすかな違和感を覚えた。
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