運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 金の縁取りがある濃茶のカバーがつけられた書物は、備忘録というには高級さが漂っていた。災厄の魔女と言われたイザベラが残した言葉をおさめたものにしては、丁寧に扱われすぎているように見える。

「おまえも読んでみるといい」
「え……」
「俺がイザベラに対して冷酷になりきれない理由がここにはある」

 そう話すアレクのまなざしは複雑な色を帯びていた。

 今までの言動から察するに、アレクはほこらで倒れていた自分を、復活した魔女イザベラと関わりがある者ではないかと疑って王都へ連れてきたはずだ。しかし、尋問するでもなく過ごさせている理由が、ここにつまっているということだろうか。

 セレナはごくりとつばを飲み込むと、両手で本を受け取った。ずしりと重たいここに、イザベラの秘密が隠されている。

 婚約者の身に起きた不幸、イザベラの鏡……それらの秘密を解き明かすヒントもここにあるかもしれないと思うと、呼吸を忘れそうになるほどに緊張した。

「読み終えたら、俺の部屋まで持ってきてくれ」

 静かに命じ、図書館を出ていくアレクの背中を見送っていると、リディアが待ちきれないとばかりに腕を引いてくる。

「セレナさんっ、読んでくださらない? 私、とっても興味がありますわっ」
「あ、……うん」

 セレナは戸惑いながら椅子に腰をおろし、目を輝かせるリディアの前で、そっと本を開く。

 几帳面な文字で記されたそれは、日記というよりは、日々の覚え書きのようなものだった。そしてセレナは、強烈な興味を惹かせる最初の書き出しを読み上げた。
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