運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
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正しいと信じてきたことは間違いでした。
ああ……私はこれから、あの人以外、何を信じて生きていけばいいのでしょう。
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 セレナは自室のソファーに背をあずけて、イザベラの備忘録を見返していた。

 冒頭に書かれたイザベラの嘆きにリディアは、「災厄の魔女と言われたイザベラにも、どなたか信頼する方がいたのかしらっ」と興奮気味に話していたが、意外な記述はそれだけではなかった。

 備忘録の中身はイザベラが成した功績で埋め尽くされていた。あれもこれも、ルミナリアの発展に貢献したものばかり。

 その一つに、ノーデルの雨に関する記述があった。北の山脈に潜むゴーレムが川を堰き止め、ノーデルの田畑を枯らした。イザベラは魔力で雨を降らし、ノーデルの作物を守るが、ゴーレムはいくら倒しても復活し、民を苦しめ続けた。そんな日々が続いたある日、イザベラは町を覆い尽くす結界のオーブを作成し、見事、ゴーレムの被害から町を救った。

「イザベラは良い魔女だったのかしら……」

 だからこそ、ルミナリアを滅ぼそうとしたというイザベラの風説に、アレクは懐疑的な見方を持っているのではないだろうか。

 扉がノックされる音に気づいて、セレナは備忘録をそっと閉じた。「どうぞ」と声をかけると、エマが姿を現す。

「セレナ様、裁縫師が到着いたしました。お通ししてもよろしいでしょうか?」
「裁縫師……ですか?」
「はい。明日からの魔術の練習には動きやすいお召し物をと、殿下がおっしゃいまして」
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