運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「倒せですって?」
「あなたに魔力があるなら、簡単でしょう」

 なかったら、どうするのよ。もしかしたら、オリオンはワイバーンよりも恐ろしい男かもしれない。

 彼が手を振ると、ワイバーンは咆哮を上げ、翼をさらに大きく広げた。

 その瞬間、胸の奥底が熱くなり、全身に張り巡らされたすべての神経を伝って、黒いもやのような力が手のひらに集まっていくのを感じた。

「何……どうなってるの、これっ」

 叫ぶと同時に、手のひらから黒いもやがあふれ出してくる。するとどういうわけか、ワイバーンが翼を縮めた。まるで、身を守るかのように。

 おびえてるの……? あんなに大きな魔物が?

 セレナは素早く手のひらを突き出した。もやの塊が青白い閃光となって、ワイバーンめがけて飛んでいく。

 それは胴を直撃し、重厚な鱗をいともたやすく貫いた。轟音とともにワイバーンの身体は吹き飛び、地面に叩きつけられる。

 たった一撃。

 巨体が砂煙に埋もれて動かなくなる。

「……う、そ」

 セレナ自身が一番驚いていた。

 力を出そうと意識したわけではない。体中から何かがみなぎり、調整がきかないままに放出された。そんな感覚だけだった。

「素晴らしい」

 オリオンは感嘆の息を漏らす。

「やはり、闇の力は健在というわけですか」

 その声音には、畏怖と好奇心が入り混じっている。

「……私が闇の、ちからを?」

 セレナの手は震えていた。
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