運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい



 翌朝、セレナはオリオンに案内されて、王宮の一角にある研究所を訪れていた。石造りの廊下を抜けると、清涼なハーブとツンとした消毒液のような匂いがかすかに漂ってくる。

 第一魔術師団はすでに、テオ率いる騎士団とともにノーデルへ向かって出発し、研究所に残った魔術師たちは聖水の精製に励んでいた。

 忙しそうに働く彼らの間を抜けながら、セレナは奥の部屋へと進む。オリオンが分厚いカーテンを引くと、室内は一気に明るくなり、フラスコや秤が整然と並ぶ──まるで調合室のような光景が広がった。

「昨夜のうちに材料はそろえておきました。どうぞ、ご確認ください」

 中央にある机を指し示したオリオンが、道を譲るように後ろへ身を引く。

「あっ、はい」

 セレナは胸に抱いていたイザベラの備忘録を開く。そこには、オーブの材料が記されている。オリオンはこの本の内容を熟知しているのだろう。

「えっと、素材は三種類……まずは核になる水晶……」

 セレナは本を見ながら一つずつ確認していく。

 机の上に鎮座する水晶は、ちょうど両手で持ち上げられるほどの大きさで、一点の曇りもなく、真っさらという言葉がふさわしいほどに澄み切っている。

「次は、魔力を安定させるミスリル……」

 赤い生地の上に置かれた、銀色に輝く金属の塊を、セレナは手のひらに乗せて眺めた。思うより軽いが、ミスリル自体、初めて見たから本物かどうかわからない。

「これが、ミスリルですか?」
「ええ。王家に保管されている大変貴重な鉱石です。アレク様が陛下の許可を得て用意してくださいました。オーブに使うのでしたら、手のひらに乗る程度でじゅうぶんかと」
「貴重なものなんですね」
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