運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「……やってみます。ワイバーンが恐れた闇の力を水晶に注ぐことができれば、闇の気配でゴーレムをおびえさせることができるはずです」

 アルヴェインの森に魔物がいなかった理由が、今ならわかる気がした。おそらく、イザベラは封印される際、最後の抵抗でほこらに結界を張ったのだろう。誰も近づかないように。魔物さえも近づかない、恐ろしい気配を漂わせて。

「闇の力は破壊するだけではありません。形を与えれば、守りにもなる。大地の魔物を鎮める結界のオーブ……あなたにならできると信じていますよ」

 オリオンの声は冷静だったが、その瞳には興奮が潜んでいた。セレナは一つうなずくと、深呼吸をして、胸もとで両手を組んだ。

 目を閉じる。ワイバーンを一撃で葬ったときの感覚を思い出すように、全身に神経を集中させた。

 あのときと同じように、胸の奥底から黒いもやがにじみ出てくるのがわかる。まぶたをあげると、ミスリルと魔石が水晶の上に浮かんでいた。

 水晶を包み込むように手をかざす。手のひらに浮かぶ紫のゆらめきが、それらとともに、水晶の内部に吸い込まれていく。

 中心にはミスリルが浮かび、透明だった水晶は徐々に闇色を帯びたサファイアの空色に変わる。

「……できた」

 セレナは思わず息を飲む。

 風と闇がせめぎ合い、水晶の奥で揺らめいている。生き物のように、規則正しい脈動が淡い光を放つ。禍々しいのに、どこか澄んで見える。

「成功しましたね。さすがです」

 オリオンは口もとをほころばせる。

「これで、ノーデルを襲う魔物を退けられるでしょう。早速、アレク様をお呼びしなければ……」
「その必要はない」

 低く響く声に、セレナは思わず振り向いた。そこには、アレクが立っていた。
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