離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 そして、ふたりは王都に到着した。
 高くそびえる城壁を背景に、建物すべてが壮麗で威厳に満ちている。
 城下の街は朝から活気に満ちあふれ、人の波が途切れることはない。
 石畳の広い通りには、行き交う馬車の音と商人たちの威勢のいい声。露店には絹の布や異国の香辛料、磨き上げられた宝飾品が並び、目を引く品が輝いている。
 どこを見ても賑やかで、華やかだ。

「すごいですね」
「……ああ」

 ぐったりしたフィリクスの姿を見て、アリシアは不安げに声をかける。
 
「旦那様、お疲れですか? 大丈夫ですか?」
「ああ。俺は3日くらい寝なくても平気だ」
「……あまり、眠れなかったのですね」
「君はよく寝ていたな」

 フィリクスの睨むような視線に、アリシアはびくっと肩を震わせた。
 彼の目の下には影ができている。相当な寝不足なのだろうとアリシアは思った。

「……申し訳ありません」
「謝らなくていい。俺の自己管理の問題だ」

 アリシアはここ数日緊張感でよく眠れていなかったせいか、疲れもあって旅のあいだはベッドに入ると同時に記憶がなくなった。
 おかげで朝目覚めたらすっきりしていたが、フィリクスはどうやら真逆だったらしい。

(旦那様には狭すぎるベッドだったし、別邸ではゆっくり休んでいただきたいわ)

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