離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 しんと静寂が訪れる。令嬢たちは驚いた顔でアリシアを見つめている。
 アリシア自身も強く言い切った自分に驚いていた。

「あ、あの……ご存知の通り、夫は遠征でずいぶん長く留守にしておりましたので、ようやく夫婦の時間が取れるようになったんです」

 この場を取り繕うための嘘も交えているが、事実でもある。

「これから夫婦として、いろいろ話し合って、ともに過ごしていきたいと思っています」

 それはまるで、自分に言い聞かせているようだった。
 離婚申請をしている分際で、大嘘をついている自覚はある。
 しかし、フィリクスともっと話して、もっと近づきたいという思いが芽生えているのも事実だ。
 
 ぎこちない雰囲気の中、アリシアの前方にいる令嬢が「あっ」と驚いた顔をして口もとを手で押さえた。そのとなりの令嬢も慌てている。

 アリシアが目を丸くしていると、背後から声をかけられた。

「アリシア、そろそろ行こうか」

 驚いて振り向くと、そこにはフィリクスが立っていた。
 今の話を聞いていたのかもしれない。アリシアは少しばかり焦ったが、令嬢たちはもっと動揺していた。

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