離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 静かなバルコニーに出ると、夜風がそっとアリシアの頬を撫でた。
 ずっと胸の奥に溜まっていた緊張がすっと抜けて、思わず安堵のため息を洩らす。
 フィリクスがそっと近づいて、アリシアに訊ねる。

「何か言われたのか?」
「たいしたことではありません」

 あまりフィリクスに聞かれたくないことばかりだったので、当たり障りのないことだけ口にした。

「旦那様とは年が離れすぎているから、話が合わないのではないかと言われましたけど」

 思わず視線を落とす。
 フィリクスは遠慮がちに言った。

「そんなことはない、と思う。実際にここへ来るまでのあいだ、君と話して俺はその……楽しかった」

 照れくさそうに頬を赤らめるフィリクスを見て、アリシアは笑みをこぼした。

「ありがとうございます」

 フィリクスは再び表情を硬くして、アリシアに向き直る。

「ところで、さっき離婚しないと言っていたが、それは本当なのか?」
「……考えているところです」
「それは、期待してもいいのだろうか?」
「えっ……?」

 フィリクスは少し不安げな表情で、アリシアをじっと見つめていた。

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