離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 もうすぐ嵐の時期が訪れる。
 侯爵領はそれほど影響を受けないが、伯爵領へ向かう山地ではよく崖崩れが起きるという。
 幸いフィリクスの視察の日程とは重ならず、それほど心配することはなかった。

 滞在はおよそ20日ほどの予定。
 出発から一週間ほど経った頃、フィリクスから手紙が届いた。
 無事に伯爵領へ到着したことがしたためられている。
 日付を見ると3日前。到着してすぐに出してくれたのだろう。

「2年も遠征に行って一度も返事をしなかったお方が、わずか20日の視察ですぐ手紙を送るとは……不思議なものだな」

 セインが呆れたように皮肉を言うと、エレナはにっこりと微笑んだ。

「今は旦那様の最優先事項は奥様のことですものね」

 こちらが手紙を出す前に届いたフィリクスからの便りだ。
 それはアリシアにとって、この上なく嬉しいものだった。

「お返事をどこへ出せばいいかしら? デートル家宛てでいいの?」
「出す必要はありませんよ。手紙が届く頃には、もう向こうを発っているでしょうから」

 セインはあっさりとそう答えた。
 それもそうだ。せっかく届いても、フィリクスがその場にいなければ意味がない。

「だったら、戻ってこられてから読んでもらうために書くことにするわ」

 アリシアは胸を弾ませながら、返事に綴る言葉を考え始めた。

「奥様も不思議な方だ。似た者同士ということか」
「仲良しなのよ。素敵なことだわ」

 セインは肩をすくめたが、エレナはにっこりと微笑んだ。

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