離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
「どういうことですか? 叔父様」

 アリシアは衝撃のあまり書類を持つ手に力が入った。
 グレゴリーは困惑の表情を浮かべながら語る。

「ああ、聞いてくれ。侯爵閣下はこれから先自分にもしものことがあれば、私にすべてを任せると言っておられたのだ。その書面を見ればわかるだろう。閣下の直筆だ」

 アリシアは震える手で書面を見つめる。
 たしかにフィリクスの字で間違いなかった。

「私はこんなこと、知りません」
「そうだろう。これはお前がここに嫁ぐ前に、私と閣下で決めたことだからな」
「そんな……」

 そこには侯爵家の当主に万が一のことがあれば、その後見人としてグレゴリーが指定されている旨が書かれていた。
 アリシアはぞくりと背筋に悪寒が走る。

(これは、私の両親のときとそっくりだわ。こうやって叔父様がうちの家を乗っ取ったのよ)

 あからさまに気の毒そうな表情をするグレゴリーを見て、アリシアは嫌悪感を抱いた。

「まだ、旦那様に何かがあったとは限りません」
「だが、行方知れずだ。このようなときのために、閣下は私にすべてを託されたのだ」

 グレゴリーはアリシアにそう言ったあと、近くにいる使用人に命令した。

「おい、そこの者。私の部屋を用意しろ。今日からここに住むのだからな」
「叔父様!」
「アリシア、現実を受け入れるんだ。これは私と閣下との契約なのだからな」

 アリシアは唇を噛んで、じっと叔父を睨みつけた。

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