離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 グレゴリーがやって来てから、侯爵家は慌しくなった。
 内装に不満を持つグレゴリーが勝手に建築職人を呼び寄せたり、使用人を入れ替えるために侯爵家の使用人を解雇しようとした。
 さすがにアリシアは抗議の声を上げた。

「叔父様、旦那様が不在のあいだに勝手なことはおやめください」
「事前準備だ。いつでも私が動けるようにな」

 グレゴリーはふと鷹のオブジェを見て首を傾げる。

「ふむ。私の趣味に合わないな。虎に変えよう」
「叔父様、いい加減に……」
「アリシア!」

 グレゴリーがいきなり大声を上げて、アリシアはびくりと肩を揺らした。

「これは私と閣下のあいだで結んだ契約なのだ。お前が口を出す権利などない!」
「でも、私は彼の妻で……」
「飾りだけの妻が何を言う?」
「えっ……」

 グレゴリーはアリシアに詰め寄り、にたりと笑みを浮かべた。

「侯爵閣下は先代の負債を肩代わりした私への恩で、仕方なくお前を娶ったんだ。でなければ、お前のような子供が閣下の妻になれるはずもない」

 グレゴリーの言葉が胸の奥に突き刺さり、アリシアは言葉を失った。
 それを見たグレゴリーはアリシアに近づいて、肩をぽんと叩いて言った。

「そう案ずるな。私はお前の処遇もちゃんと考えている」

 返す言葉が見つからず、アリシアがぎゅっと唇を噛んでいると、突如背後で低い声がした。

「これは一体、何事ですか?」

 帰宅したセインがグレゴリーを冷めた目で見つめていた。

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