離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 セインが説明をし終わったところで、エレナが口を開いた。

「これからどうすればいいかしら? 男爵様が居座ってしまったわ」
「現時点では契約が実行される状態ではない。多少好き勝手はするだろうが、表立って動くことはできない。旦那様が不在のあいだは奥様が当主代理となるからな」
「そうね。当然だわ」

 ふたりの言葉にアリシアは息を呑んだ。
 胸の奥にずしりと重たい何かが落ちてくる。
 侯爵家の当主ということは、この領地と領民への重責も追うことになる。
 そのことを思うと足がかすかに震えた。

「これからのことだが、俺は王都へ行く。旦那様に託されていることがある」
「どれくらいで戻れる?」
「10日、いや一週間だ。それまでお前は何があっても……」
「奥様をお守りするわ!」

 最後はセインの言葉を被せるように、エレナが力強くそう言った。

「護衛騎士もつけておく。なるべく外を出歩かないように。どうやら町にも領主行方不明の情報が伝わっていて、一部で騒ぎになっているようだ」

 エレナとアリシアは目を合わせると、ふたり揃ってセインに頷いた。

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