離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 エレナはアリシアのその気持ちを否定はせず、穏やかに自身の意見を口にした。

「旦那様は確かに大変ご多忙な日々をお過ごしでしたが、挨拶もしない目も合わさないというのは大人としてどうかと思います。あくまで私の意見ですわ」
「そ、そうね……」

 エレナの遠慮ない言葉にアリシアは少し驚いて目を見開く。
 しかし、エレナはきちんと肯定もしてくれた。

「不器用なお方だと思いますが、とても真面目でお優しいお方です。これまでアリシア様のことを否定されたことは一度もありませんもの」
「ええ、そうね。いつも許してくれるわ」

 今までは興味がないから放置されていたのだと思っていた。
 けれど、王宮へ向かう途中に彼の口から聞いた本当の思いが、アリシアの中で彼の印象を大きく変えていた。

「人と接することが苦手なお方です。しかし、人の話はよく聞いてくださいます。素直で寛大な心を持ったお方ですわ。貴族の男性でこのようなお方はそうそうおりません」

 エレナの言葉に、アリシアの脳裏に浮かんだのはディーンの声だ。

『嫁のために頭下げてくれる旦那なんかいねーよ』

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