離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
「侯爵閣下がお亡くなりになった」

 その日、グレゴリーは王宮直轄の法務機関から役人を呼び寄せていた。
 その人物は一枚の証書をアリシアの前に差し出す。

「こちらがレオフォード侯爵の死亡証明です」
「……嘘よ、こんな……だって、旦那様はまだ」

 震える手で書面を受け取ったアリシアの顔が、見る見るうちに青ざめていく。それを見たグレゴリーはさも残念だという顔で話した。

「ご遺体の一部が見つかったそうだ。服装からして閣下であると判断され、王宮もこれをもって正式に死亡を認めた。なんと嘆かわしいことだろう」

 グレゴリーは大げさに眉をひそめ、声を震わせてみせる。
 しかし、アリシアの耳にはその声が届かない。目の前がぐらりと揺れ、叔父の姿すらかすんで見えない。

(……旦那様が……死んだ?)

 その言葉が頭の中で何度も反響し、現実の音が遠のいていく。
 呼吸が乱れ、眩暈がした。しかし、ここで倒れるわけにはいかない。
 アリシアはゆっくり深呼吸し、混乱する頭でどうにか自分を落ち着かせようと努める。
 目頭が熱くなり、込み上げてくる涙を必死に堪えた。

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