離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 沈黙の中、アリシアの代わりにエレナが口を開く。

「ご遺体を確認することはできますか?」

 その言葉に、アリシアはハッとした。
 実際にこの目で見なければ、このことを信じることはできない。
 すると、グレゴリーはため息まじりに答える。

「大変むごい姿らしい。婦人が見るには忍びないと聞いている」
「それでも、この目で拝見しなければ信じられませんわ」

 エレナの強い口調に反応するように、役人がそっとグレゴリーに耳打ちした。
 グレゴリーはそれを受けてわざとらしく眉をひそめ、大袈裟に嘆息して言った。

「火葬されたそうだ。遺骨のみ戻ってくる手筈になっている」
「伴侶に許可を得ずに勝手なことを……!」

 エレナがとっさに抗議すると、グレゴリーは肩をすくめた。
 彼は悪びれもせずに言い放つ。

「可哀想な姪っ子に配慮したのだ。とにかく、早々に葬儀の準備を……」
「……できません」

 アリシアは俯いたまま、ぽつりと呟いた。

「ん? 何だって?」

 グレゴリーが眉をひそめると、アリシアは静かに顔を上げ、彼の目をまっすぐ見つめて言った。

「認められません。私は、旦那様が亡くなったなんて、信じません」

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